今回はその理由について解説します。
また、ヨークシャテリアの被毛の特長や、美しく健康な被毛を保つためのケアについてもご紹介します。
1.なぜ抜け毛が少ないの?
(1)換毛期がない
犬にはシングルコートとダブルコートという2種類の毛の生え方があります。ヨークシャーテリアは、シングルコートという季節による生え変わりがない毛の構造をしているので、抜け毛が少ないと言われています。
・ダブルコート(二重毛)
ダブルコートは、オーバーコートと呼ばれる皮膚を守るための毛と、アンダーコートと呼ばれる体を保温するための毛の2層構造で生えています。
アンダーコートは秋から冬にかけて保温性を高めるためにどんどん増えていきますが、春に向かって必要のない分が大量に抜けます。
コーギー、ダックスフント、キャバリア、ラブラドール、柴犬、シベリアンハスキー、シェトランドシープドッグ、スピッツ、ポメラニアン、ラブラドールレトリーバー、フレンチブルドッグ、パグ、ジャーマンシェパード、ジャックラッセルテリアなどがこの毛の生え方をしています。
・シングルコート(単毛)
ヨークシャーテリアは、シングルコートです。
アンダーコートはもともとあまり発達していません。
そのため、大量の抜け毛に悩まされることはないのです。
ブラッシングをすればもちろん毛は少量抜けますが、「だっこするとすごい量の毛が服につく」ということはありません。
シングルコートの他の犬種はトイプードル、シーズー、マルチーズ、パピオン、グレート・デーン、グレーハウンド、ミニチュアピンシャーも同じ生え方をしています。
シングルコートは、人間の手によって室内犬として改良された犬種が多いですね。
(2)室内犬として改良されている
ヨークシャーテリアは1800年代初頭、工場のねずみを捕まえる狩猟犬のためにつくられました。しかしその後、美しい被毛が注目を集め、上流階級の貴族たちに愛されるようになります。
1800年代中頃には女性がアクセサー感覚で抱くラップドッグ(愛玩犬)の座を射止めていました。
その中で、より小さく抜け毛が少ない、飼いやすい室内犬に改良がすすめられたと言われています。
2.ヨークシャーテリアの被毛の注意点は?
- 被毛を切らないと伸び続ける
- オイリーな被毛なので、脂が多くにおいが強い
- 毛玉やもつれができやすい
- 体温調節が苦手なので、飼い主が温度管理をする必要がある
ヨークシャーテリアの毛は切らないとどんどん伸び続けます。
そのため飼い主さんが定期的にトリミングに連れていく必要があります。
ツヤがある分、脂っぽくなりやすいので、シャンプーを兼ねて月に1度はトリミングサロンに連れて行くようにしましょう。
また、毛玉やもつれができやすいので日々のブラッシングも大切です。
スキンシップと皮膚の状態の確認、そして毛玉防止のために毎日ブラッシングしてあげましょう。
そして、ヨークシャテリアは換毛期がなく抜け毛が少ないメリットはありますが、寒暖差に弱く体温調節が苦手です。
そのため飼い主が気温や湿度には気を使ってあげなければいけません。
こちらの記事も合わせてご覧ください 愛犬が快適な生活を送るために!知っておきたい適正湿度 |
3.ヨークシャテリアの毛が抜けたら病気?
抜け毛が少ないはずのヨークシャテリアの抜け毛が多い。
あるいは皮膚がみえるほど脱毛してしまっている場合は、何らかの問題を抱えている可能性があります。
触った時に少し抜け毛が服に多くつくくらいだったら、ブラッシング不足なので、お手入れを頻繁にする・定期的にシャンプーをするくらいで解決できます。
問題は皮膚が見えてしまうくらいの脱毛してしまっているケースです。
脱毛の種類はあげればきりがないほど多岐にわたります。
勝手に自分で判断せずに、動物病院に行くことをおすすめします。
ここでは代表的なニキビだにや、真菌(カビ)の感染、ホルモンバランスの乱れ、アレルギーなどを解説します。
(1)ニキビダニ症(毛包虫症、アカラス)
画像引用:犬の皮膚病について
症状
犬の被毛に寄生する虫のしわざです。
脱毛は主な症状ですが、感染の有無により、痒みを伴うものや伴わないものなど様々です。
皮膚の免疫力が低下している幼犬や、老犬に見られることが多いそうです。
治療
投薬になります。
ダニを退治する飲み薬や外用薬を使用します。
(2)アトピー性皮膚炎
画像引用:犬の皮膚病について
症状
皮膚バリア機能の低下により、家の中のほこりやダニが体に入り込むとにより発症してしまう皮膚炎によっておこる脱毛。
3歳以下で発症し、強いかゆみを伴います。
後発部位は目や口の周り、指の間、お腹などです。
時に、外耳炎だけが症状という場合もあります。マラセチア(真菌の一種)や細菌の二次感染により、さらに痒みが激しくなります。
慢性化すると、皮膚は色素沈着や、しわ状になってしまう症状がみられます。
治療
アトピー性皮膚炎は完治することがないので、痒みとどう付き合っていくかが課題になります。
病院で投薬をしてもらうのと当時に、家庭での生活環境を整えることの両方が、痒みの緩和につながります。
(3)ストレス性脱毛症
画像引用:泉南動物病院HP
症状
ストレス性の心因性脱毛の症状は、他の皮膚病とは異なり皮膚自体には異常がありません。
よってストレスなどによる血行不良からくる脱毛であれば、毛根から根こそぎ抜けるので、きれいな皮膚が露出した状態になります。
人間の心労でおこる円形脱毛症と同じような状態になることが多いです。
また、一部分を舐めすぎたり、過剰な毛づくろいにより脱毛してしまった場合は、切れ毛によりその部分は短い毛が残った状態になります。
舐めることで口の中のバイ菌が皮膚に付き、二次的に細菌感染を起こしてしまったり、その部が唾液によりむれてしまい皮膚炎を起こしたりします。
治療
第一の治療は、愛犬が不安がっていること、ストレスを起こしている理由、行動問題の原因などを追求し、それを取り除くことです。
下記の様な原因は思い当りませんか。
- あまりかまってあげれず、留守番が多い
- かわいがってくれた家族が出張や結婚で家を出た。
- 苦手な人が同居するようになった。
- 気に入っていたおもちゃがなくなってしまった。
- ご飯やトイレの場所が急に変わった。
- 散歩が少ない。
根気よく原因を特定しそれを遠ざけ、時間をかけてゆっくり見守ってあげましょう。
日常生活をよく観察したり、脱毛が起こった時期頃に何か環境的に変化があったかどうか、飼い主さんの昔の記憶をたどったりして、できる限りその原因を解明しましょう。
ライフスタイルの問題で、なかなかすぐに改善できない事もあるかもしれませんが、しっかりとスキンシップをとり、愛犬が心地よく過ごせるようにするのが一番の治療です。
一次的な環境の変化で時間とともに治る場合もあります。
しかしどうしても治らずに長期化してしまう場合は、抗不安剤や精神安定剤を飲ませる治療もあります。
(4)ホルモンの異常
画像引用:犬の皮膚病について
症状
体内では、皮膚や被毛に影響のあるホルモンがいくつか存在しています。
そのホルモンは毛の発育だけではなく、毛の生え変わりも関係しています。
そのため、ホルモンの分泌異常になると毛が抜けるだけになり、新しい毛は生えなくなってしまう場合があります。
この影響のあるホルモンとは、副腎皮質ホルモン、甲状腺ホルモン、性ホルモン、成長ホルモンです。
上の画像は、甲状腺からのホルモン分泌量が低下したことによって発症した脱毛です。
このホルモンの分泌が低下すると、タンパク合成が低下するため皮膚や毛を作る材料が不足します。
そのため脱毛を起こしやすくなります。
また、皮膚機能のバリアが低下し、膿皮症(皮膚の細菌感染)などが起こりやすくなります。
体の中の代謝が悪くなって、寒がったり、運動を嫌がったり、肥満になったりします。
これらの症状はすべてがみられるわけではないので、典型的なもの以外は見つけにくい病気と言っていいでしょう。
治療
甲状腺ホルモン剤を生涯にわたり投与する必要があります。
年をとると必要な甲状腺ホルモンの量は、少しずつ減ってくるので、その都度調整がいります。
(5)真菌(カビ)による脱毛
画像引用:犬をはじて飼う人へ
症状
「真菌」はカビに似た形態をもった胞子状の菌です。
その真菌が「皮膚真菌症」を引き起こす原因となります。
犬の顔や耳、目の周り、口、脇の下など、皮膚の柔らかいところに症状が良く現れます。
激しい痒みは生じませんが、ひどくなると、全身に広がりますし、脱毛が見られるようになります。
皮膚のバリアが弱くなると細菌の二次感染を起こす場合があり、その場合は強い痒みになってしまうことがあります。
また、人間にも感染し、円形の水虫の様な症状を伴います。
治療
感染範囲が広がらないように毛を刈って抗生物質などの薬を飲んだり、薬を塗布したりしながら病原菌をなくしていきます。
また真菌から体を守り、体の清潔を保つために、しっかりと動物用の薬用シャンプーなどを使って皮膚の清潔を保っていきます。
4.予防
様々な要因でなってしまう脱毛症ですが、予防する方法もあります。
習慣にとりこむことで、愛犬の痛みを事前に防ぎましょう。
- ブラッシングを日課にする
- 定期的にトリミングサロンでシャンプーしてもらう
- 散歩は服を着せる
皮膚の異常に気づくだけではなく、もつれや毛玉をなくすことで汚れの蓄積や、蒸れを防ぎます。
まとめ
ヨークシャテリアの抜け毛が少ないのは、シングルコートという毛の生え方をしているということがお分かりいただけたでしょうか。シングルコートの特徴をよく理解し、お手入れをしっかりしてあげましょう。
そして皮膚の異常に気づいたら早めに動物病院へ連れて行ってあげましょう。