今回はフローリングが犬に与える影響や、ケガや病気の予防法についてお話しします。
1.フローリングは犬にどのような影響を与えるのか

- ツルツルとすべってしまい、体勢を崩す
- ジャンプしたり飛び降りた時、着地に失敗し転ぶ
- 余計な力が関節や肢に加わり、筋肉を傷めたり捻挫する
- 階段から落ちやすい
昔のように犬を屋外で飼っている光景は今ではほとんど見なくなり、室内で飼っている家が多くなりました。
本来、土の上で生活していた犬が人間と同じ環境で暮らす時に、思わぬことが健康を害する原因になってしまいます。
あるペット保険会社の統計によると、犬のケガの66.3パーセントは家の中でおきていて、特に脱臼・骨折はフローリングが原因です。
人間にとっては掃除がしやすく衛生面でも好まれるフローリング床が、犬のためには良くないのです。
犬の足裏の毛が伸びているとなおさらですが、爪のある動物とってフローリングを歩くのは至難の技です。
人間に例えるならば、スケートリンクで足を開いたり閉じたりする状態を思い浮かべると、その辛さを想像することが出来ます。
滑るので踏ん張ろうとして関節に余計な負荷がかかり、それが長期間続くと慢性的な関節炎になってしまったり脱臼を繰り返してしまうことがあるのです。
畳やいぐさのマットでも同様のことが起こります。
2.フローリングのすべりが原因となる代表的な疾患
(1)膝蓋骨脱臼(しつがいこつだっきゅう)
膝蓋骨脱臼とは、犬の後ろ脚にある膝蓋骨(膝のお皿)が、通常は滑車溝(かっしゃこう)という溝にはまっているのですが、何らかの理由で外れてしまうことを指します。
後足の膝の骨(膝蓋骨)が内側にずれ、進行すると歩行も困難になってしまいます。
肥満や高いところから飛び降りた際の衝撃も原因に挙げられますが、もっとも多いのは、室内飼育における床のすべりです。
かかりやすい犬種:トイプードル、ヨークシャテリア、プードルなど
詳しくはこちらもご覧ください トイプードルは脱臼に要注意!トイプードルの膝蓋骨脱臼と意外な原因について |
(2)椎間板ヘルニア
背骨の間にある椎間板が飛び出し、神経を圧迫する病気で、慢性的に進行する場合もありますが、ほとんどはジャンプや転倒での突発性で、進行すると脚がマヒし、立つことすらできません。
さらに、椎間板が神経細胞に刺さり、脊髄軟化症を発症してしまうと、一週間ほどで命を落としてしまうこともあります。
特に軟骨異栄養犬種と呼ばれる、椎間板内の水分が脱水しやすい下記の犬種は注意です。
かかりやすい犬種:ミニチュア・ダックスフンド、ウェルシュ・コーギー・ペンブローク、フレンチ・ブルドッグ、シー・ズー、ビーグルなど
合わせてこちらもご覧ください トイプードルはヘルニアになりやすいの?ヘルニアの症状とは? |
(3)股関節形成不全
股関節が緩み、炎症による痛みなどで歩き方にも異常が表れます。遺伝性の発症は大型犬には多く見られますが、中・小型犬の場合は、その多くがフローロングのすべりなどの、環境的な原因によるものです。
遺伝性の場合は関節を人工のものに置き換えるなどの手術をしなくてはいけない場合もあります。
足腰に負担のかからない環境を整えることが何よりの予防です。
かかりやすい犬種:ポメラニアン、ゴールデン・レトリーバー、ラブラドール・レトリーバー、ボーダー・コリーなど
(4)レッグ・ペルテス
骨盤と接する側の大腿骨の先端が壊死してしまう病気で、特に小型犬の成長期に多く表れます。
遺伝性のものとも考えられていますが、床のすべりが助長させてしまうケースもあります。
一度かかってしまうと、治療は手術以外に方法がなく、壊死した部分を切除したり、関節を人工のものに置き換えるなどの処置を施す必要があります。
かかりやすい犬種:トイ・プードル、ヨークシャー・テリア、成長期の犬など
3.対策

フローリングに関する問題は、飼主さん共通の悩みとも言えるので、対策グッズもたくさん販売されています。
ひとつずつ解説していくので、ご自身のライフスタイルに合わせてお選びください。
(1)ペット用マット

タイルマット 9,496円
フローリングの上に敷くだけで、手軽に床のすべりを防止をすることができます。
表面は絨毯の様な素材で、裏面はゴムになっているものが多いです。
しっかり足腰を守ることができるのですが、おしっこをしてしまった時にタイルが大きいので洗濯の手間がかかります。
また、設置が簡単なぶん、わんちゃんが遊んでめくってしまったり、かじってしまうこともあり、耐久性はそこまで期待できません。
(2)コルクマット

コルクマット 階段用 ¥4,927
表面はコルク状になっていて、裏はゴムかクッション素材になっています。
タイムマットよりも重さが軽く、安価なので気軽に設置できます。
階段に張ったり、リビングなどのお部屋にパズルに様に敷き詰めることもできます。
しかし、安価で耐久性がなく、見た目が少しカジュアルなのでインテリアにこっている方は物足りなさを感じるかもしれません。
(3)ペット用ワックス

リンレイ 滑り止め 床用コーティング剤 500m ¥ 3,736
フローリングに塗り込むワックスです。
液体を塗るので、お部屋のい雰囲気を損なわずに滑り止め対策をすることができます。
しかし業者ではなく自分で行うため、ワックスを塗る労力と乾燥させる時間が必要です。
また、均一に塗るのは素人だと難しいものがるようです。
ペット用のワックスを塗る前のフローリングが何の対策をされていないときには、ペット用ワックスの効果があまり感じられないこともありそうです。
30畳分程度の容量があるので重ね塗りをしたほうがいいでしょう。
費用は1,500~5,000円程度です。
(4)滑り止めスプレー

滑り止めスプレー ¥2,480
フロアコーティングとまではいかなくても、フローリングに直接スプレーして滑り止め効果を発揮させるグッズもあります。
ただし、コーティングのように耐久性と持続力があるわけではないため、一時的な効果にすぎません。
継続的な効果を望むのであればその都度スプレーする必要があるのですが、完全に滑り止めの効果があるかというとそうでもないという感想を見受けられます。
マットでカバーできない部分のみを、こういったものでカバーするのはいいかもしれませんね。
(5)犬用すべりどめ靴下

犬用靴下 ¥ 1,296
フローリングのすべり防止のために、ペット用靴下が販売されています。
足全体にラバーが付いていたり、くつ下の裏側にゴムが付いていて滑り止め効果があります。
犬の大きさ別に何種類かのサイズも用意されています。
デメリットとしては、くつ下を嫌がる子は自分で脱いでしまう事や歩いているうちに脱げてしまう事があることです。
犬は4本足ですので、2セット買うのを忘れずに。
まとめ
誰しも愛犬には出来るだけ長生きしてほしいと願うものですが、関節の病気なら直接に命にかかわることはないという油断は大敵です。
慢性的な関節炎になると歩く度に痛みがあるため、おのずと運動量が減ってきます。
運動量が減ると肥満の原因になり、体重が増えることによってさらに関節への負荷が増します。
このような堂々巡りを繰り返すことによって更に状況が酷くなってしまい、痛み止めの頓服薬が欠かせないということになるかも知れません。
インテリアを気にすると、ワックスを塗ったピカピカのフローリングはとても見栄えが良く素敵ですが、愛犬の不調の原因になるのでは意味がありません。
愛犬の健康寿命を少しでも延ばすために、ライフスタイルに合わせてケアの方法を試してみましょう。