猫が夢中で爪とぎする仕草は確かに可愛いんですが、場所を選んでして欲しいと願う飼い主の方は多いでしょう。
壁や柱、家のいたるところでとがれた日にはたまったものではありませんよね。
特に賃貸物件にお住まいの方は退去時費用に直結する部分ですから、いくら愛猫とは言え壁をガリガリするのはやめてもらいたいところです。
家の壁を守る為には、まず爪とぎそのものに対する知識を増やし、その上でしっかり対策を取ることが大切です。
こうした努力なしで猫の爪とぎを野放しにしておくと、しつけがなっていない飼い主責任として賃貸物件の原状回復費用にかなりの高額を請求されてしまう場合もあるのです。
★猫の爪とぎを止めさせることはできない?
猫が一切爪とぎをしなければ、飼い主の心労もなくなるわけですよね。
それでは猫に爪とぎはしてはいけない行為だと教えるしつけが必要でしょうか。
猫が爪とぎする理由にはいくつかありますが、持って生まれた本能によるものと、後天的な学習によって行うものとに分類されます。
前者は具体的には「古くなった爪の外側の皮を剥がすため」「自分の臭いをつけることで縄張りを主張するため」などです。
後者は「背伸びを兼ねたストレッチ運動のため」「飼い主の気を引くため」「ストレス発散のため」などがあります。
従って、猫に爪とぎそのものをやめさせてしまうのは、本来自然に行われるべき爪の生え違いを妨げる恐れもある上、ストレスを溜めませる結果になりかねません。
心身両面の健康管理において爪とぎは非常に有効ですので、やめさせないようにしましょう。
★爪とぎの場所を指定することはできる
「爪とぎをやめさせよう」ではなく「壁を守ろう」に飼い主の考え方をシフトしましょう。
壁ではないどこかで爪とぎさせてあげれば良いのです。
まず、猫は何故壁で爪をとぎたがるのかを知っておきましょう。
そもそも猫が爪とぎをしたくなる場所の条件は「適度な高さ」で、かつ「爪が程よく引っ掛かる」ことなのです。
壁なら床から天井まで繋がっているからどんな猫にでも高さは合いますし、家の壁はざらついているものが主流ですよね。
条件を満たしているからこそ、壁で爪をとぐのだという基本をまず押さえます。
つまり、飼い主を困らせようとわざわざ壁を選んでいるのではなく、とぎやすいから壁でとぐだけなのです。
従って、壁での爪とぎをやめさせたいのなら、「壁以上にとぎやすいスポット」を用意すれば良いのです。
気に入った場所を用意できれば、壁の代わりにそこを使うようになってくれます。
その時、そこでなら心置きなく爪をといでいいよ、という寛容な心で見守ることも大事です。
★家の壁を守る!猫の爪とぎ対策とは
・壁に爪とぎ防止シート
それでもグッズの設置には限界がありますから、合わせて壁自体も守っておきましょう。
「爪とぎ防止シート」は粘着性のある透明なシートで、品質はピンきりです。安いものなら100円均一で手に入りますし、本格的なものはホームセンターやペットショップに行けば見つかります。
このシートを使う最大のメリットは「壁がざらざらじゃなくなること」です。
「壁以上にとぎやすいスポット」を新たに創出するのではなく、壁をとぎにくいスポットへ転じることで相対的に他の場所のとぎやすさを感じさせるやり方です。
何せシートがつるつるです。
これまでざらざら壁で爪の引っ掛かり具合を楽しんでいた猫も「あれ、ここは何だかとぎにくくなったぞ」と感じ、壁で爪をとぐこと自体やめる場合があります。
やめない猫もいますが、それでもシートが壁を守ってくれるので安心です。
値段と品質のバランスを確かめた上で、壁一面とは言いませんが狙われがちな場所に貼っておくと良いでしょう。
長い期間貼りっ放しにすると、剥がれにくくなる恐れがありますので、長期的に貼る方は2~3ヶ月で貼り替えると良いです。
・壁にワイヤーネット
猫の脱走防止にも使えるアイテム「ワイヤーネット」を壁に掛ける方法もあります。
壁以上にとぎやすいスポットを、壁の真ん前に据えるのです。
既に壁での爪とぎが習慣となっていてなかなか他の場所で壁を爪とがない猫にも有効です。
ネットですから自在に形を変えられ、角にも設置しやすいのも利点です。
・様々な種類の爪とぎを複数設置
市販の「爪とぎグッズ」を複数種類購入する方法もあります。
複数のグッズを用意するのは飽きっぽい猫のことですから、一種類のおもちゃで長く遊んでくれないように、一種類の爪とぎグッズを使い続けてはくれないからです。
そこで種類の違う複数の爪とぎグッズを、猫のお気に入りの場所に設置します。
猫にはマーキングしたくなる場所が決まっていますので、よく観察して置く場所を決めましょう。
マーキングしたくなる場所がわからないという飼い主の方にとって、大きなヒントはこれまでの爪とぎ歴です。
「これまでお気に入りの爪とぎ場だった壁付近」に設置して様子を見るといいでしょう。
何度も爪をといでいた壁は、マーキングポイントである可能性が高いです。
他に「猫の行動が切り替わる場所」も、マーキングポイントになりやすいと言われています。
例えば、食事する場所から移動して寝る場所に切り替わるスポットです。
マーキングポイントは一箇所ではありませんので、固め打ちして複数のグッズを一箇所に置くのは勧めません。
いくらお気に入りの場所であっても、猫はひとところに留まることを楽しめない生き物です。
日によって居心地のいい場所が全く変わる猫もいますし。
いくつかのマーキングポイントを見極め、各所に爪とぎグッズを散りばめることが重要です。
・壁の近くにみかんの皮を置く
これも防止シートと同様、壁の優位性を下げるやり方です。
猫は柑橘系の臭いが苦手ですので、みかんの皮を壁際にしきつめておくことで、壁に寄りつかなくなります。
みかんの皮が乾いて無臭になるとまた壁に寄ってきてしまうのが難点ですが、一時しのぎには使えるでしょう。
・猫の爪切りにトライする
どんなやり方でも壁での爪とぎをやめてくれない猫には、最終手段です。
灯台下暗し、「爪を切る」のです。
壁をいくらガリガリされようと、爪がとがっていなければ被害は最小限に食い止められますよね。
猫の爪ってうまく切れるか自信ない、なんて方も多いかもしれませんが大丈夫です。
皆さん初めはそうです。
肉球を押して爪を出し、血管を切らないように気を付けて切るだけです。
肉球を押す以外、人間の爪切りと違いありません。
勿論動物病院でも切ってくれますから、定期健診のついでにお願いしてみると良いでしょう。
一度お医者さんが切るのを見て学べば、次からは自分で自信持って切れますよ。
★猫は爪をとぐ生き物です。
爪とぎそのものを迷惑がらないようにしてあげましょう。
壁がボロボロになるのが嫌なら、壁以上のスポットを用意してあげれば良いのです。
猫もあなたに叱られたいわけではありませんから、悪気があって壁を選んでいるわけではないことは忘れないでくださいね。
壁以上のスポットを用意する方法としては、大きく二つです。
「壁を爪とぎに相応しくない場所だと思わせ、相対的に別の場所でとぎたいと思わせる方法」と「壁以上のスポットを手間暇かけて用意する方法」です。
前者も壁を守る意味では有効ですが、苦手な柑橘系の臭いを嗅がせるのは可哀相という場合は、最初から後者で対策を取ってあげましょう。
猫も「ここで爪をとぐと褒めてもらえる」とわかれば、またそこで爪をとぎたくなるものです。
壁以外でとげた時には、たくさん褒めてあげましょう。
飼い主のあなたにとっても、大切な猫ちゃんにとっても、過ごしやすい家となりますように。