歯石除去をする上で最もネックになるのは「全身麻酔をしなければならない」ということでしょう。
そんな中、最近ペットサロンでよく耳にする”無麻酔歯石除去”を検討している飼い主さんも多いのではないでしょうか。
そこで今回は、無麻酔で歯石除去を行うメリット、デメリットを紹介します。
もくじ
1.そもそも歯石除去って必要?
犬は唾液の成分がアルカリ性であるため、もともと虫歯になりにくいのですが歯石がつきやすいという特徴があります。
犬は自分で歯を磨くことが出来ないので飼い主が歯を磨いてあげないと、すぐ歯石がついてしまうのです。
この歯石が歯肉炎の元となり、そのまま放置しておくと悪化して歯周病になります。
犬の80%以上が歯周病と言われていますが、じつは歯周病は、歯茎の腫れや出血だけでなく、口臭の原因となったり、歯が抜けてしまったり、ひどい場合は歯周病菌が血管を通り全身に広がることによって腎臓、肝臓、関、肺など体全体に悪影響を及ぼしてしまいます。
時には、目の下や頬の皮膚を突き破って膿が出てきてしまうケースも。
歯周病の進行によって頬や顎に穴が開いてしまっていたら、その治療も行うことになります。
5歳を過ぎたくらいから歯周病になる可能性が高いため、もし歯石がついているのに気が付いたら歯石除去をしてあげましょう。
2.無麻酔での歯石除去って、大丈夫なの??
高齢の犬の場合や、麻酔をかけないで出来るのなら無麻酔で歯石除去を行いたいと思う人は多いのではないのでしょうか?
ですが無麻酔での歯石除去にはデメリットも多くあるのです。
無麻酔歯石除去のメリット
- 麻酔や鎮静剤によるリスクがない
高齢のワンちゃん(老犬)や、過去に麻酔で体調を崩してしまった子も安心して処置を受けることができます。 - 麻酔科の施術と比べると、安価で気軽に出来る
- 高齢の犬や持病を持っている犬も施術を受けることが出来る
- 定期的に施術を受けても、体にかかる負担が少ない
無麻酔歯石除去のデメリット
- おとなしい子限定
口を触られるのが嫌いで暴れるような子は施術ができないため、おとなしい子限定になっています。 - 歯の裏側や歯周ポケットの処置はできない
- 怪我をする危険性がある
先端が鋭く尖っているハンドスケーラーという道具を使って除去をするため、とても滑りやすくなっている。
大人しい子でも多少は動くので、その時にハンドスケーラーが滑って、歯肉や舌を傷つけてしまう可能性が高いです。 - 気管支炎や誤嚥性肺炎の危険性
無麻酔の状態は気管チューブを挿入することができません。折れた歯を飲み込んでしまったり、超音波スケーラーを使用する場合は歯石で汚染された水が気管に入ってしまう可能性があります。
そうなると、気管支炎や誤嚥性肺炎へつながる危険性があります。 - 出血した場合の対処ができない
ぐらぐらしている歯の歯石を取ろうとしたときに歯が抜けてしまったり、折れてしまうということもあります。
もしも施術中に歯が抜けてしまい、大出血したとしても無麻酔の場合は対処することが出来ません。 - トラウマになる可能性がある
犬にとって、長時間もの治療は大きなストレスになってしまいます。痛い思いをしたり、無理やりおさえつけられて恐怖を感じると、トラウマになってしまう場合があります。
そうなってしまうとその後の歯磨きが難しく、せっかく歯石を取ってもまたついてしまいます。
3.無麻酔で歯石除去ってどうやるの?
無麻酔歯石除去は、麻酔をしないでオールハンドで行うので、人間が歯医者さんで歯石除去をする時と同じ方法です。
無麻酔歯石除去の流れ(約1時間)
- カウンセリングで施術が可能かの判断をします。
ワンちゃんの性格や体調、歯の状態を調べ、無麻酔で施術ができるかを判断します。 - お膝の上に犬を寝かせた状態で施術をします。
施術をしてくれる方にもよりますが、施術前にマッサージをすることにより、リラックスした状態に。鎮痛剤や犬の体を拘束するような器具は使用しません。 - スケーラーという先の尖った”破骨鉗子”を使用して、歯石をとります。
ストレスがかからないように休憩をはさみながら体調を見つつ施術してくれます。 - ポリッシングで歯の表面を磨きます。
スケーラーで歯石を除去した後は、歯の表面がざらざらしている状態です。
歯石がつきやすくなっているので、研磨剤の入ったクリームで歯の表面をみがき、つるつるに仕上げます。
健康な歯には歯石を取ることでの痛みはなく、歯のエナメル質を傷つけることもないと言われています。
また、犬のペースや体調に合わせ、1回で歯石が取り切れない場合もありますが、その場合は、たいてい数回に分けて施術をしてくれます。
4.全身麻酔にて歯石除去する場合は?
麻酔をしている状態なので、犬の性格に左右されることなく施術が可能です。
痛みを感じることもないので、じっくりと歯の状態を観察することができ、歯の裏側・歯と歯の間・歯周ポケットまで、細部にわたってケアすることが可能です。
見た目も綺麗になり、歯周病の治療も行うことが出来ます。
麻酔あり歯石除去の流れ(約1時間、抜歯がある場合はそれ以上)
- 問診や事前検査を行います。
万が一に備え、胸部のレントゲンや血液検査を行います。 - 気管チューブを挿入します。
誤って折れた歯や歯石で汚染された水を飲み込んでしまわないように、気道を確保します。 - 鎮静後、麻酔を施し、超音波スケーラーを使って歯石を除去します。
歯周病になっている場合には、歯周ポケットに消毒したり、必要であれば抜歯などの処置をします。
炎症が起きている場合は、歯肉を洗浄して膿を取り除き、除去しやすいように歯石を柔らかくする薬を使用した歯磨きを行うなど、症状に合わせた施術をしてくれます。 - 研磨剤、マイクロエンジンを使って歯の表面をつるつるに仕上げます。
無麻酔の時と同様、歯石がまたついてしまわないための作業を行い、施術は終了です。
ここまで完璧に処置をするためには麻酔と獣医師の技術が必要です。
麻酔がしっかりと切れたら、飼い主さんにお迎えにきてもらいます。
お家では安静に過ごし、もしごはんを食べる場合は少なめで与えてあげてください。
詳しくは獣医師さんが説明をしてくれるでしょう。
5.注目すべきなのは、歯周ポケットの中の菌!
愛犬の健康のためにも、歯石をしっかりと除去して、口内を清潔にしてあげないと!と思いますよね。
歯周病の進行を防止するためには、歯はもちろん、歯周ポケットの中の汚れと細菌を取り除かなければなりません。
しかし、無麻酔で歯石除去をした場合、見た目は綺麗になりますが、歯周ポケットの中の菌までは取り除くことが出来ていない場合があります。
綺麗にしていたつもりだったのに・・!では遅いので、歯周ポケットの中までしっかりと洗浄・消毒をしてくれる麻酔ありの歯石除去が良いかもしれませんね。
まとめ
全身麻酔に抵抗があったり、無麻酔で大丈夫かなと思ったりと悩むことはあると思いますが、まずは毎日歯磨きを行い、定期的に口腔ケアをして歯石除去をしなくてもいいようにしましょう。
腔内を清潔に保ち、歯石が溜まっていないか観察することを習慣づけて、歯の健康を守ってあげることが愛犬のためになります。
どうしても歯石を除去しなくてはならない状況になった時は、愛犬にとってどの方法が一番良いのか考えて決めることが大事です。
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