もくじ
(1)8歳以上の犬の2割が認知症発症の疑いあり!
医療の発達が目まぐるしい現代の我が国は超高齢化社会と呼ばれ、日本人の平均寿命が延びています。
それと同じように、ペットの平均寿命も年々伸びています。
愛犬家であれば我が子同然の愛犬には、健康で長生きしてほしいと願うのは当然のことです。
人間が高齢になれば心配される病気のひとつに認知症がありますが、実は犬も認知症を発症する可能性があることはまだあまり知られていません。
犬の認知症は、正式名称を認知機能不全症候群といい、人間でいうアルツハイマー病のような症状を引き起こすといわれています。
その原因は老化による脳機能の衰えや認知機能の低下、遺伝によるものなど、まさに人間のアルツハイマー型認知症と同様なことが考えられています。
しかし、まだ解明されてない不明な部分もある病気です。
その症状と、症状の出方や程度はその犬によりさまざまです。
起こり得る具体例はふらふらと歩く、ぐるぐると同じところを回る、徘徊する、昼夜逆転の生活となる、夜泣きをする、甘えん坊になる、トイレの失敗を繰り返す、攻撃的になるなどが挙げられます。
犬の8歳という年齢は人間でいう50歳程度を示し、一つの基準とされています。
8歳以上の犬の2割が認知症発症の疑いがあるとの調査結果が発表されているため、8歳になったらもしかしてと疑って様子を見ることも必要になります。
(2)愛犬の行動がおかしいなと思ったら
高齢になった愛犬の様子が少しでもおかしいなと思ったら、できるだけはやく動物病院やクリニックなどの医療機関にかかるのが賢明です。
認知症の症状は何気ない、ちょっとしたことから始まります。
何となく甘えん坊になったような気がする、何となく元気がなく日中寝てばかりいるなど、見落としがちになります。
しかし高齢犬にはこれらの様子は認知症かもしれないという頭で接し様子を注意深くみたり、動物病院を受診したり気を配ってやることが大切なのです。
なぜなら、早期治療が認知症の症状の改善や進行の抑制につながるからです。
(3)愛犬の認知症に備えるには
認知症を発症してしまうと、発症前の状態に治してあげることはできません。
発症させない、また発症してしまったら症状を和らげたり進行を抑制するほかないのです。
認知症を予防する、または抑制するのに大切なのは、食事と運動、そして社会や人とのかかわりあいであるといわれています。
食が重要視されるのは人間と同様で、口から食べれなくなることほど不健康なことはありません。一日の摂取量を適正にすること、体に合わせた食事内容にすること、必要に応じてサプリメントの摂取や投薬をするなどといった食生活を良質なものにすることで認知症対策はもちろん、愛犬の心身の健康を守ります。
適度な運動は心身の健康はもちろん、脳へも良い影響を与えます。
犬は体を動かし遊ぶことで喜びを感じ、ストレスのない安定した状態をつくります。
おすわりや待て、ボールキャッチなど飼い主の指示に従うことも脳をフル活用して行っているので、高齢になったからといって遊びをさせないのは逆効果なのです。
また言葉の理解がなくとも話しかけることで気持ちを推し量ることができる犬にとっては、飼い主の愛のある語りかけは良い影響を与えます。
そして、家族とのコミュニケーションをはじめ、散歩で出会う人々や犬たちとの接触も脳への良い刺激となります。
いつも同じようなことの繰り返しよりも、散歩コースをすこし変えて見える景色を変えてみたり、昔行ったことのある場所や初めて行く場所などへ赴き非日常を味わったりすることは脳の老化抑制につながります。
食、運動、かかわりあいが認知症に良い効果を生むというのは、人間に対しても全く同じことがいえます。
(4)ドッグフードの切り替えやサプリメントの利用も有効
動物病院やホームセンターなどでは、犬種や年齢に合わせたドッグフードを販売しています。
高齢になると食が細くなったり気に入ったものしか食べなくなったり、良質な食生活を送らせるのにも苦労するかもしれません。
味付けや香り、形状もさまざまなドッグフードがあるのでいろいろな種類を試すことをおすすめします。
また、必要に応じて特定の栄養素を補給させる目的でサプリメントを利用するのも手です。
重要なのは一日当たりの適切な量を適宜与えることです。
食べたいときにあげるという方法では生活リズムの乱れを招いたり、過剰摂取につながりかねません。
ドッグフードやサプリメントの種類が豊富でどれを選べばよいか迷う場合には、動物病院やクリニックなどで獣医師へ相談してみましょう。
症状に合わせて必要な栄養素や食事量についてもアドバイスしてもらえます。
(5)犬の痴呆の判断基準って何
犬の認知症かどうかの判断は、「犬痴呆症診断基準」というものに沿って行います。
犬痴呆症診断基準とは歩行状態や感覚の状態、鳴き声などといった認知症と思われる症状についてや食欲や生活リズム、排せつなどといった日常生活のようす、健康状態など複数の項目について点数化し判断するものです。主に飼い主から見ての判断になり、血液検査やレントゲンやMRIといった画像診断などといった医学的な知見ではありません。
診断基準の項目は5から10項目程度の簡易的なものから、100点法というより詳細についてまで判断するものがあります。
そのどれかで認知傾向があると判断されたものについて、認知症を発症したと診断が下るのです。
犬の認知症は獣医師ではなく、生活を共にしている飼い主に診断の裁量を任されているといっても過言ではないのです。
(6)まとめ
高齢になれば病気の心配は尽きませんが、8歳以上の犬の2割以上に認知症の疑いがあるとは愛犬家にはショックな情報かもしれません。
しかし正しい情報と知識をもってすれば、発症を遅らせたり症状を抑制したりより良い状態へ導くことも可能です。愛犬の健康を守るのは飼い主の使命であり、義務です。
認知症を発症してしまうと飼い主である家族はもちろん、それ以上に愛犬自身もつらい思いや症状に耐えなければなりません。
大切な愛犬の健康寿命を延ばして、尊い命を全うできるようサポートしたいものです。