今回は、猫がかかりやすい代表的な病気を例にして病気の症状を和らげ回復へとつなげるおすすめの食事療法を紹介します。病気の原因がわかれば予防もしやすくなるので毎日の食事の参考にしてみましょう。
★尿路結石の場合
ストルバイトは、リン酸アンモニウムマグネシウムの結晶で、尿のphがアルカリ性に傾くと発生しやすく、食物中のリンやマグネシウムを過剰に摂取することでさらに形成されやすくなります。しかし、ストルバイトは尿phを酸性にすると溶かすことができ、尿phは食事でコントロールできるのです。ですから、ストルバイトと診断された場合、マグネシウムが制限された、尿を酸性化する組成のフードを与える必要があります。
ストルバイトは、場合によっては手術を行わなければならないこともありますが、基本的には食事療法で結石を溶解、再発予防することができます。ちなみに、二番目に多いとされるシュウ酸カルシウム尿石症の場合は、フードを変えただけでは溶かすことはできないので、もう出来てしまった結石に対しては、食事療法は効果がありません。ストルバイトでのみ効果があることを覚えておきましょう。
尿路結石症の猫のフードは、動物病院で相談の上、先生が推奨される物を使用するのが良いでしょう。値段も通常のものよりも高くなってしまいますが、そのまま一般的なフードを与え続けると症状が悪化してしまうので、ストルバイトになったら必ず専用フードに切り替えるようにしましょう。
尿路結石症の専用フードはいくつか種類があり、溶解用や、維持・予防用、肥満猫向けの低カロリータイプなどそれぞれの状況に合わせて選ぶことができます。種類によって栄養成分の配合が違っているので、必ず現在の状態に合ったフードを選ぶことが大切です。
たとえば、溶解用のものはストルバイト尿石を速やかに溶かし、原因となる栄養素を必要以上に取らないよう制限されています。しかし、総合栄養食のカテゴリからは外れているので、寛解後も治療用フードを与え続けると栄養失調になってしまう可能性も。寛解後は、適切な栄養素が配合され、なおかつ再発しにくい維持・予防用フードが販売されているのでそちらを与えるようにしましょう。また、肥満は尿石症を引き起こす重要な因子なので、もし当てはまるなら、併せて体重コントロールも必要です。
尿路結石の予防にはドライよりもウェットフードがおすすめです。尿路結石は水分不足も重要なファクターであり、積極的に水を飲むように勧めますが、飲水量の減る冬場や、勧めてもあまり水を飲まないタイプの子には、ウェットフードを中心にあたえると、少しは水分を補うことができます。
★糖尿病の場合
糖尿病は、6歳以上の猫、特に去勢雄に多く見られます。去勢雄は太ってしまうことも多いですが、肥満は、必ずしもインシュリンを必要としないⅡ型糖尿病のリスクを4倍にすると言われています。
糖尿病は、Ⅰ型、Ⅱ型共に、一日の中での血糖の変動を極力緩やかにして、高血糖状態が続かないようにするのが大切です。ですので、糖尿病の理想的なフードは、血糖値を急上昇させる炭水化物は少なく、血糖値上昇をゆるやかにし、且つ満腹感も得られる食物線維は多く、肥満防止のため低脂肪、中タンパクであることが求められます。
炭水化物の原料については、食後血糖値の上がりやすい米や、小麦、トウモロコシより、血糖値の上昇を緩やかにするでんぷんの多いジャガイモなどがおすすめと言えますが、問題はその量なので、少量であれば米などの穀物の完全排除にこだわる必要はありません。
フードは、基本的にかかりつけの獣医師の勧めるものを使われることをおすすめします。そして、これを適切な量与えることが大切です。他に持病のない、Ⅱ型糖尿病の肥満猫の場合、減量するだけで、血糖値が安定してくることが多いです。インシュリンが欠かせないⅠ型糖尿病では、食事の内容や一回量、与える回数とそのタイミングは、インシュリンと関連して調整されるため、かかりつけ医の指示に従い、自己判断で大幅に変更したりしないようにしましょう。
一つ、注意しなければならないのは、痩せぎみの猫には高線維食は与えてはいけないということです。糖尿病によって、ただでさえ摂取エネルギーを吸収できずに痩せてきているのに、さらにフードを低カロリーに変えてしまうと、ますます体重減少が進んでしまうからです。
痩せすぎの猫には、まず、インシュリンと高カロリー・低線維食を与えて、適正体重まで増やさなくてはなりません。長い闘病生活の間には、療法食に飽きてしまうこともあるでしょう。糖尿病に適した高線維食は、バリエーションがあるので、かかりつけ医に相談しつつ、定期的に変えていくといいかもしれません。
★まとめ
猫の病気には食生活が関わっていることも多々あります。治療中はもちろん回復後も病気を予防するために食事に気を使うことが重要です。動物は話すことができませんし、痛みを我慢してしまって病気の発見が遅れてしまうこともあります。症状にいち早く気付いて対処できるようにするためにも、日頃から状態をチェックしライフステージに合わせてサポートしてあげることが大切です。