★1.ご用心!猫のひっかきで起こるこんな病気
猫は飼い主に慣れていても、爪が鋭いのでちょっとしたふざけあいで飼い主にけがを負わせてしまうことがあります。このような時、猫の歯や爪に付着しているバルトネラというウイルスが体内に侵入することがあり、注意しなければなりません。
このウイルスに感染すると、猫ひっかき病といわれるリンパ節炎を起こし、熱を出したり、化膿したりする恐れがあります。
猫ひっかき病は、猫が人間を引っかいたり噛んだりすることで感染します。猫同士の主な感染経路はノミの寄生です。
主な症状としては、引っかかれたりした部位が5日~2週間程度で赤くなったり、水ぶくれができたり、皮膚が硬くなったりします。
また、半数近くの飼い主は頭痛や発熱、だるさ、食欲不振など内面からも症状の変化がわかります。この症状は、3歳以下の若い猫から移ることが多いとされています。
★2.舐められたり噛まれたりすることで起こるこんな病気
ひっかき傷は肌が傷つくため感染しやすいのも無理はないと考えられており、猫からうつる病気の中でも比較的重要視されています。
しかし、舐めただけでも感染のリスクがある病気について対処している人は意外と少ないです。
前述のバルトネラ症は、舐めたり甘噛みしたりすることでも感染する恐れがあります。その感染力は強力で、甘噛みを含む動物のかみつきやひっかきだけでなく、舐められたり、動物の体から遊離した細菌を吸い込んだりしても発症します。
このような感染経路は、猫からうつる病気としては危険性が高いため、十分な対策を検討しましょう。
バルトネラ症を発症すると、舐められたり噛まれたりした傷口が腫れて痛みを感じたり、化膿してしまいます。
また、空気感染による発症では、鼻や口、のどなどに異常を感じ、副鼻腔炎になったり、咳が悪化したりすることがあります。
そのため、最初は風邪と判断して病院に通わない人も少なくありません。しかし、この病気に感染した時の症状はひどく、感染してから数時間以内に傷口が腫れたり激しい痛みを感じたりします。また、放置しておくと傷口が化膿して、さらに広がっていく危険性もあります。
噛み傷やひっかき傷が深い場合には、骨にまで炎症が及んで穴が開くこともあります。感染力の強さ、発症した時の症状の重さから考えて、しっかりとした対策と早めの受診が必要な病気です。
★3.すぐできるヒトの予防策
・(1)とにかく手を洗う
自分で対処できる方法としては、不可抗力で噛まれたり引っかかれたりしたときも、できるだけ雑菌に感染しないようにすることが重要です。
そのため、犬や猫に触ったり、噛まれたり引っかかれた時などは、すぐに流水でよだれや雑菌などを洗い流す必要があります。これだけでも水の勢いで雑菌の多くが流されていきますので、動物と触れた後の手洗いを習慣づけましょう。
傷がある場合は、できるだけ内部に入り込んだ菌を洗い流すよう、患部を押すようにして流水で洗い流し、石鹸でよく洗いましょう。手指用の消毒薬も有効ですが、必ずきれいに手洗いをしてから使用しましょう。
・(2)うがい
最後に、空気感染によるリスクを避ける意味でも、うがいは大切です。
空気感染の場合にはいつ感染したかがわかりにくいこともあり、動物から移された病気だと認識するまでに時間がかかりがちです。
特に空気が乾燥する冬は粘膜の免疫力が下がるため、感染を防止するためにも定期的なうがいを心掛けましょう。
★4.家庭でできる対処方法
・(1)散歩後の足を清潔にする
猫は散歩に行くことはほとんど無いと思いますが、外を歩かせた場合は、足先を清潔にすることを心掛けて下さい。シャンプーを使わなくても、ぬるま湯を張った洗面器の中で足先をこするだけでも効果はあります。体を濡らさせることを嫌う猫ちゃんが多いので、難しい場合はウェットティッシュで拭くなど、できるだけ室内に菌やウイルスを持ち込まないようにしましょう。
また、口の中の雑菌を減らすための対策として、歯磨きの習慣をつけることも効果的です。
ただし、歯ブラシで歯を磨くことは猫ちゃんの場合とても難しいです。仔猫の頃から習慣づけるか、指で口の中を触ってご褒美を与えるなどで少しずつ慣れさせていくことができれば、将来の歯周病も防ぐことができるので、チャレンジしてみる価値はありそうです。
・(2)ノミダニ駆除
ノミやダニから感染する病気も多いため、室内飼育が理想的です。しかし、完全室内飼育でもノミやダニの感染が起きてしまう事があります。特に新しい猫を迎えるときなどは、注意が必要です。
室内飼育であっても、ノミやダニの駆除と予防が同時にできる薬剤があるので、動物病院で処方してもらいましょう。背中に付けるスポットタイプと飲み薬があり、飲み薬にはオヤツのような味の付いたものもあります。猫ちゃんの性格や与えやすさに応じて使い分けることができるので、獣医さんに相談してみるとよいでしょう。
また、日頃からブラッシングや冷ました蒸しタオルで拭くなど、被毛のケアをさせてくれるように慣れさせておくことも大切です。
シャンプーが嫌いな子がほとんどなので、汚れてから洗うのではなく、日々のケアを少しずつ行うほうがよいでしょう。
・(3)爪切り
猫のひっかきによる病気のリスクを抑えるには、爪きりをして引っかかれても深い傷にならないようにすることが必要です。
常に爪が短い状態にしておくと、空気を嫌う雑菌は動物の足から離れていきます。ただし、深く切りすぎると血管を傷つける恐れがあるため、先端の尖った部分のみ切るようにし、根元に近い透けて見える肉の部分を切らないように気をつけましょう。
・(4)部屋は清潔を保つ
このほかにも、部屋全体を清潔に保つという対策もあります。
室内は猫の毛やほこりなど、いろいろなものが落ちています。
もちろん、清潔に保つことで猫だけでなく自分自身も体調不良が改善されるなどのメリットが期待できます。空気清浄器を設置したり、時には大掃除をしたりして埃などを取り除くようにしましょう。
カーペットのように毛足の長い敷物は、清潔に保つことが難しいため、洗えるものを選ぶか、こまめに取り換えたほうが安心でしょう。
★まとめ
このように、ある程度自分でも対策をとることはできますが、完全に病気を防ぐものではありません。かといって、せっかく一緒に過ごしている猫とスキンシップもとれないというのは残念です。
少しでも感染を防ぐために、家でできる予防はきちんと行い、感染の危険性を低くすると同時に、人間側も免疫力が下がらないよう、日々の生活に気を付けるよう心がけましょう。
気を付けていても、感染を疑うような症状が出た場合は自己判断で対処せず、早めに病院を受診する事が最も重要です。特に免疫力の弱い赤ちゃんやお年寄りのいる家庭では、予防と人間の健康管理に気を配る必要があります。