もくじ
1.犬も塩分は摂取するべき?
わんちゃんの飼い主さんでしたら、「犬に塩分をあげてはいけません」というセリフを目にしたことがあるはずです。犬は人間のように汗をかくことはないので、発汗によって失う塩分(ナトリウム)がほとんどありません。おそらくそのあたりから、犬と塩分についての固定観念が生まれています。確かに塩分の取りすぎはよくありません。
しかし全く必要ないかというと、それも違います。人間と同じように、わんちゃんにとっても塩分は大切なミネラルのひとつで、たとえば身体の中を満たしている体液にも溶け込んでいる必要不可欠な成分なのです。
2.塩分について
人間もわんちゃんも、その体重の約60パーセントは水分の重さが占めています。身体を作り上げている細胞ひとつひとつの中には水分(細胞内液)が入っていますし、その細胞と細胞の間にも水分が満ちているのです。血管を流れる血液にももちろん水分が含まれています。この細胞内液と細胞外液を両方合わせたものが体液なのです。
体液は身体の中で栄養素を運んだり、老廃物を体外へ排出させる働きをしています。また、体温を一定に保っているのも体液のおかげなのです。身体の機能が正常に働くためには、この体液の中に溶けている電解質のバランスが一定に保たれていなければなりません。この電解質のひとつが塩分(ナトリウム)なのです。つまり塩分は、生き物が良好な健康状態で生きていくために、無くてはならない成分といっても過言ではありません。
3.犬が塩分不足になるとどうなっちゃう?
人間と同じように、わんちゃんが健やかな毎日を送るためにも、大切なミネラルである塩分ですが、これが不足してしまうと一体どのようなことが起きるのかをみていきます。
まず、わんちゃんは本能的に、不足しているナトリウムを摂取するための行動を起こすのです。たとえば散歩に出たときに土をなめたり、食べたりすることがあります。これは、土の中に含まれるナトリウムを摂取しようとしている場合があるのです。同様に、そのほかにもナトリウムが含まれていそうなものを、しきりとなめようとします。人間の手や腕の表面には、発汗により塩分がついていますし、わんちゃんのおしっこの中にも入っています。
ですから、肉球やそのほか身体のさまざまな部分を、以前と比べて丹念になめるようになったら、塩分の摂取不足になっていないかどうか、気を配ってあげることが必要です。
もし塩分の摂取量が不足し、体液中に溶けている電解質のイオンバランスが崩れてしまうようなことが起こってしまうと、身体にはさまざまな不調が引き起こってしまう可能性が生まれます。なぜなら体液は、栄養・老廃物、そして酸素を身体の必要な部分に運び、消化器系統をはじめとする内臓機能や神経機能の調節も担っているからです。
4.犬の塩分が不足した場合の治療法を知ろう
塩分が少しだけ足りなくなった程度だと、わんちゃんは自力で塩分が補給できそうなところをなめてそれを補い、飼い主さんが気がつくこともないうちに済んでしまう場合も多々あります。しかしそのまま少しづつ進んでしまうと、いろいろな症状を引き起こすことにつながり、重症化してしまう場合もないとは言い切れません。ですから、症状が軽いうちに適切な対処をすることが重要です。
塩分不足が少し進んだわんちゃんでは、口の中や目が乾いていることがあります。愛犬が飼い主さんの手をなめたとき、いつものように唾液が付着せず、乾燥したような印象を受けた場合には要注意です。またおしっこにも変化が現れます。塩分が不足しているときには色が濃くなる傾向があるので、散歩に出たときや、シートの上におしっこをしたときに、色をチェックする習慣をつけます。
そのほかの症状としては、食欲不振や筋肉痛も起こるので、元気がなくなったり、ふらついたりすることがあります。こうして、塩分不足がある程度進行してしまった状態で下痢や嘔吐が起こると、それが原因でさらに急激に塩分を失うことになるため、たいへん危険です。ときには、自分の力で立ち上がることができなくなってしまいます。
この段階になると、腎臓の機能も悪くなっていることが多いです。すぐにかかりつけの獣医さんに連れて行き、診察を受けます。腎臓の病気だと、人間の場合は人工透析を思い浮かべますが、わんちゃんは輸液での対処が一般的な治療法です。
もうひとつ、重症化することが原因で起こる病気として挙げられるものに、シュウ酸カルシウム結石があります。結石は腎臓の中で作られますが、大きくならずに結晶の段階で見つけることができれば、薬による治療と食事療法を併用し、様子をみながら改善を図ることも十分可能です。
5.塩分過多になると犬はどうなる?
塩分不足から起こりうる健康トラブルもありますが、やはり人間と同じく、塩分の取りすぎにも気をつけなければいけません。過剰なナトリウムの摂取で一番心配になるのは心臓病です。
食事などで塩分(ナトリウム)を多く取りすぎると、それを薄めようとする働きから、水をたくさん飲むことになります。すると体内の水分量が増えるため、血液の量も多くなるという現象が起きるのです。その結果、増加した血液を身体に循環させるため、心臓にかかる負担が強くなってしまうことになります。これが、塩分過多が心臓病を引き起こすメカニズムです。
心臓が悪くなってしまったわんちゃんの症状として、散歩や運動をいやがるようになる・ゼーゼーと苦しそうな咳をする・呼吸が荒くなるなどの変化があげられます。心臓病は命にかかわる病気で、一度患ってしまうと残念ながら完治は難しいです。しかし薬を投与して治療することにより、病気が進むのを遅らせてあげられます。
それと並行して、飼い主さんによるケアも大切で、塩分をコントロールした食事を与え、わんちゃんの心臓に負担を与えないよう、安静に過ごせるための配慮が大切です。
もちろん、わんちゃんが間違って人間の食べ物を口にしてしまったからといって、すぐに心臓病に結びつくわけではありませんが、塩分の多い食事を続けることが心臓病を引き起こす原因であることはまぎれもない事実です。毎日の積み重ねが重要なので、わんちゃんが口にするものには十分な配慮が欠かせません。
6.普段の餌に塩分を加えた方がいいの?
小動物の臨床栄養学データによると、大人のわんちゃんに必要なナトリウムの量(一日分)は、体重一グラム当たりにつき約50mgとなっています。
ドッグフードを食べてる場合、ナトリウムは含まれているので、それにさらに加える必要はありません。
しかし手作りしているケースでは、適当な量が入っているかどうかのチェックをしてみます。ナトリウムと食塩の大まかな換算ですが、食塩分の相当量1gでナトリウムが約400mgと覚えておくと便利です。ただし、ナトリウムは食塩として加えなくても、野菜や肉にも含まれているので、摂取量の計算をするときには忘れないように気をつけることが重要です。
7.塩分が多いおやつを知っておこう
おやつは食事と違い、毎日たくさん食べるものではありません。少量あげるだけなので、それほど神経質になる必要はないのですが、だからといって制限なしというのは困ります。また、わんちゃんが喜ぶからといって、人間の食べ物をおやつとしてあげてしまうのは厳禁です。
まとめ
塩分(ナトリウム)は、愛犬の健康を維持するための要となります。不足してもいけませんし、多すぎても病気を引き起こす原因になります。ですから一度しっかりと一日の総合摂取量をチェックし、平均してどのくらいの量を取っているか把握してみることも、たいへん意味のある重要なことです。