実は犬にとっても珍しくない病気なのです。そして早期発見ならば元の生活にもどることもできると言われています。
今回は椎間板ヘルニアの初期症状や治療、対策などを解説していきます。
1.椎間板ヘルニアとはどういう病気?
首から腰にかけて背中にある背骨は、一つの長い骨ではなく、小さな骨が一直線に並んでできています。
その骨と骨の間にあるのが椎間板(ついかんばん)です。
この椎間板があるおかげで、腰を曲げたり伸ばしたり、ひねったりすることができるのです。
椎間板ヘルニアは、この椎間板が変性して、飛び出してしまうことが原因で起こります。
飛び出た椎間板が、背骨の中を走っている神経の束「脊髄」を圧迫することで、痛みや麻痺などの症状が出てきます。
2.椎間板ヘルニアになりやすい犬種
椎間板ヘルニアには、『ハンセン1型』とハンセン2型のふたつの種類があります。
(1)若くしてかかりやすい『ハンセン1型』
ミニチュアダックスフント・コーギ
トイプードル・シーズー・チワワ・ヨークシャーテリア
フレンチブルドッグ・パグ・ペキニーズ・ポメラニアン
椎間板ヘルニアになる7割がミニチュアダックスフントというデータもあるくらい、発症頻度が高いといえます。続いて多いのがコーギーなので、やはり胴長犬種の飼い主さんは特に注意が必要ですね。
また、トイプードルやシーズーなどもホルモンの関係で椎間板が若いうちから変性を起こし、椎間板の衝撃吸収能力が低下します。
椎間板に強い力が加わることで、3~6歳の比較的若いうちから椎間板ヘルニアを発症しやすいと言われています。
(2)加齢にともなって発症する『ハンセン2型』
- マルチーズ・
- ゴールデンレトリバー・柴犬
- ヨークシャーテリア
- ラブラドール
- シベリアンハスキーなど
大型犬も含まれるのが特徴です。
つまりどの犬種も椎間板ヘルニアが発症する可能性はあると言えるでしょう。
3.初期症状に気づくには?
こんな症状がでたら要注意!!
- 段差を嫌がるようになった。
- 散歩の途中で帰りたがるようになった。
- お気に入りのソファやベットにのぼらなくなった。
- 抱きかかえると痛がり「キャン」と鳴く。
椎間板ヘルニアは早期発見・早期治療が鉄則です。
このような初期症状で気づくことができれば、適切な治療により愛犬を元の生活も戻せる確率も高まります。
「もしかして・・・」と思ったらすぐに獣医師に相談をしましょう。
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4.5段階のグレード
椎間板ヘルニアは重症度が5段階に分かれています。ヘルニアは放っておいても悪化する一方で自然治癒は望めません。
より早い時期に獣医さんに診てもらい、適切な治療を進めることで愛犬の負担を減らすことにつながります。
グレード1 | 痛みを感じる。 麻痺はないが、脊椎(背骨)に痛みを感じ、運動を嫌がるようになる。 いつもは上り下りできる段差を上り下りできなくなったり、飼い主さんが抱きかかえたときに痛みを訴えて「キャン」と鳴くことがある。 |
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グレード2 | 麻痺、歩き方に影響が出る。 歩行可能だが、後ろ足の力が弱くなり、ふらふら歩いたり、足先をすりながら歩く。 |
グレード3 | 立てなくなる(麻痺)。 後ろ足を自分で動かすことができなくなり、引きずって前足だけで歩くようになる。 |
グレード4 | おしっこが自力でできなくなる。 膀胱はいつも尿がたまった状態で、ぽたぽたと垂れ流しのようになる。 後ろ足の皮膚の感覚も無くなる。 |
グレード5 | 下半身を触られていることが分からなくなる。痛みの感覚がなくなる。 一番最後になくなる深部痛覚までなくなった状態です。 後ろ足をはさみなどで強くはさんでも痛みを感じない。 |
5.どんな治療をするの?
椎間板ヘルニアの治療は大きく分けて『内科療法』と『外科療法』に分けられます。(1)内科治療
- ケージの中で安静にする
- 薬の服用
トイレの時間以外は狭いケージの中でじっとさせる『ケージレスト』という絶対安静状態を、薬の服用と併合し、椎間板が安定する4~6週間続けます。
外科手術に比べて愛犬への体の負担や、飼い主さんへの経済的負担も少ないですが、手術に比べて回復が遅い、再発の可能が高いという欠点もあります。
半導体レーザー治療を併用すると、2週間ほどで完治することもあります。
(2)外科治療
- 患部を特定するため、骨髄造影・CTスキャン・MRI検査が必要
- 全身麻酔をかけ、背中を開き、脱出した椎間板物質を取り除く。
- 費用が20~35万と高額となるため、飼い主さんの覚悟が必要
重症の子はできるだけ早めに手術をすることが望ましいといわれています。
しかし、手術をしたから確実に治るというものではなく、たとえ手術をしても神経の機能が回復しない場合や、症状が改善しない、足の引きずりが残る可能性もあります。
その場合は車椅子を用いてのリハビリをすることもあります。
(3)それぞれの治療の成功率は?
グレード3までは内科療法に比べて外科療法は5%程度改善率が高いだけです。
しかしグレード5になると、内科療法では改善率は5%以下で、外科手術でも改善率は60%程度です。
また、グレード3や4から急にグレード5に進行する事があるので、グレード3以上の場合は手術を勧められることが多いようです。
6.予防
愛犬を椎間板ヘルニアにさせないために、飼い主さんは日頃どのような対策ができるのでしょうか。(1)肥満にさせないように食事管理をする
肥満は腰への負担を重くしてしまいます。
愛犬の体型を維持するために、食事管理をするのも飼い主さんの仕事です。
日々、良質なドッグフードを適量与えましょう。
こちらの記事も併せてご覧ください
犬の肥満は飼い主の責任!3つのチェックポイントで知る愛犬の肥満指数
(2)正しい抱き方をする
・お尻とお腹をしっかりと支え、反らせないようにする。
意外と愛犬の腰に負担をかける抱っこの仕方が多いので気をつけましょう。一番危険なのは前足2本をもって持ち上げる方法。
これは腰が反り返ってしまい、大きな負担をかけます。
正しくは、片方の手を首の下か前足の下、もう片方の手をお尻の後ろに当てて、縦になって腰が伸びたり反らないように抱っこしてあげましょう。
(3)段差の登り降りを極力させない
人間が思っている以上に、段差から降りる時の衝撃は愛犬の足腰に負担をかけます。
家の中のソファーにはスロープをつけ、お散歩中の階段はなるべく抱っこをして登らせないようにするといいでしょう。
(4)フローリングにマットを敷く
人間にとっては便利なフローリングですが、犬にとっては滑りやすく、腰や足に負担をかけます。
床の素材を張り替えたり、愛犬が歩く場所だけでもブロックタイプのマットを敷き詰めることをおすすめします。
詳しくはこちらをご覧ください
知らなきゃマズい!フローリングから愛犬の足腰を守るためにしてあげられること
まとめ
いかがでしたか。犬は言葉が離せないので病気が分かりずらいですが、必ず何かしらのサインを出します。
手遅れになってしまう前に、そのサインをしっかりと汲み取り、信頼できる獣医師さんにいちはやく診せてあげましょう。